第5章 波乱の揺れ
「船長さんにキスされるストレスかも……」
「う」
の本音だったが、思いの外ローはショックな顔をして、いじめているような気分になってしまった。
「ごめん……」
しょんぼりした声は反省しているように聞こえたが、ここで「いいよ」と言うとまたキスされそうなので、急いでテントの中に入る。
「入っちゃダメだよ。絶対だよ」
「わかった。……ここにはいていいか?」
テントの外のマットレスを指してローは尋ねた。
他に行き場がない子犬のような目で見られて、さすがにもダメとは言えなかった。
入り口のジッパーを閉めて毛布にくるまると、外から「」と呼びかけられる。
「そんなに嫌だと思わなかったんだ。可愛くて触りたくて仕方なかった。反省してるから……嫌わないでほしい」
女たらしはそういう思考だったのかと納得したような、だからって許しちゃいけないような。
が返答に困っていると、
「もうキスはしないから……また一緒に何か食いに行ったり、遊んだりしよう」
嫌わないでほしいの内訳を説明された。確かにローと一緒に遊んだり食べたりするのは楽しかったが、彼の「キスしない」は信用出来なかった。
「二人きりじゃなければ……いいよ」
出かけるときは必ず、ベポやペンギンやシャチと一緒なら。
二人きりではは常にローのペースに巻き込まれてしまうし、彼も堪え性がない。
「……どうしても二人じゃ嫌か? 俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど……船長さんの彼女にはなりたくないから、二人きりは嫌」
ものすごく長い沈黙のあと、やっと彼は「わかった」と頷いてくれた。