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彼は女たらしの悪い人【ONE PIECE】

第1章 身投げじゃなくて




「私は。だよ」

 にこにこ笑っては自己紹介した。そして怪訝そうにローを見る。

「ええと……?」
「トラファルガー・ローだ」

 シャチに(おそらく意図的に)紹介を省かれてしまったので、遅ればせながらローは名乗った。
 聞き覚えがあったのか、は目を瞬いた。

「学校に行く途中に、トラファルガー病院があるよ」
「それ、キャプテンの親父さんの病院」

 シャチにばらされてローは顔をしかめた。できればあまり喧伝したくないのだ。
 しかしが反応したのは違うところだった。

「キャプテン??」
「ああ、えっと、あだ名だよ。俺らしか呼ばないけどね」
「船長! って感じだろ?」

 シャチとペンギンの要領を得ない説明には不思議そうだ。

「何の船長さんなの?」
「潜水艦だよ。海賊になって7つの海を荒らし回るんだ」

 子供時代の遊びの設定には「面白そう」と笑った。

「私も乗りたい。悪いやつ倒すの」
「海賊が悪いやつだろ」

 ローの指摘にシャチたちは白けた顔をする。

「何言ってるんですか。海賊はただのアウトローですよ」
「私腹をこやす貴族とか海軍とか、そういうのが悪いやつでしょ」

 映画の見過ぎだ。憮然とするローを放置して、シャチはを誘った。

「これからラーメン食べに行くんだけど、一緒に行かない?」
「俺、デザート奢るよ」

 焦ったベポの声に振り返ると、ソフトクリームが無残なことになっていた。

「俺、平熱高いから……」

 ソフトクリームは溶けてべちゃべちゃになってしまっていた。今日は特に暑いので無理もない。

「ちょっと待って、ウエットティッシュがあったはず」

 汚れてしまったベポの手を救うため、はベンチの上にカバンの中身をひっくり返した。
 柴犬の小さいぬいぐるみとか、パンダのポーチとか、もこもこの財布とか、色々入っているが勉強道具は見当たらない。模試だったはずなのだが。

「あった! はい、どうぞ」

 ペンギンとシャチも協力してべしゃべしゃになったコーンをゴミ箱に捨てさせ、汚れた手を一緒に拭いてやる。
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