第5章 波乱の揺れ
「熱いから気をつけろよ」
「ありがとう」
湯気の立つカフェオレに口をつけて、は顔をほころばせた。タピオカももっと甘くていいと言っていたので砂糖を多めに入れたのが良かったようだ。
テントに入るなとは言われたが、近寄るなとはコラソンにも言われなかったので、テントの前に座ってローはと会話できる距離を確保する。
「秘密基地みたいだな」
テントの中には毛布やカバンやローがに買ってやったクマのぬいぐるみなどが散らばっていた。停電がまだ続いているので懐中電灯だけが明かりで、余計に秘密基地感がある。
「コラさん、テント組み立てるのすごく上手だったよ」
カフェオレをすすりながらは褒めちぎる。たとえコラソンでも、が他の男を褒めるのを聞くのは面白くなかった。
には触らないと約束したので、彼女が膝に乗せているクマのぬいぐるみを取り上げて顔をぎゅーぎゅー潰す。
「クマちゃん虐待しちゃダメっ」
カップを置いて、慌ててはクマを取り返そうとした。そんなからクマを遠ざけて、ローは彼女を誘い出す。
(ちょろいな……)
クマを取り返そうと身を乗り出したを軽く押すと、バランスを崩してローの膝の上の倒れ込んだ。いじめっ子の気分になってきた。
「く、クマちゃん返して……」
床に座った泣きそうな顔で懇願されて、ローは幼稚園児みたいな真似を反省する。クマを返すと、はほっとして胸に抱き込んだ。可愛い。
「……っていじめたくなるな」
「なんで!? いじめられるの嫌だよ!」
「泣きそうな顔するのが可愛いから。俺に意地悪されて俺のことで頭いっぱいにしているの可愛い。そのあと優しくするとほっとした顔するのがまた可愛い」
未知の思考回路すぎるのか、真っ赤になりながらは「えええ……」と消え入りそうな声でうろたえている。その反応も可愛い。
「キスしていいか?」
顔を近づけると「ぅえ!?」とは座ったまま飛び上がった。