第5章 波乱の揺れ
(今の俺は嫌ってどういう意味だろう……)
小さくて消え入りそうな声だった。けれど確かな拒絶に、思い出すと心臓がキリキリする。
今のローから変わることを求めているのか、以前のローなら良かったのか。
(……キスする前なら?)
デートしていたときはは楽しそうだった。ローも心底楽しかったし、美味しいものを食べて顔を輝かせるや、可愛い雑貨を見てはしゃぐが見られて嬉しかった。見たことのないの顔を見るたび、新鮮で、可愛くて、もっと見たい、触れたいと思ったのだ。
あのときはも、少なからず同じ気持ちでいてくれていたと思う。
(やっぱりキスか。あれで信用なくしたか……)
確かにやりすぎだったとは思う。完全に暴走していた。出来るものなら15分前の自分を殴りたい。
カフェオレを淹れてコラソンの寝室とは別の部屋に行くと、テントが組み立てられており、中でがはしゃいでいた。しかしローに気づくとハッとしてテントのジッパーを締めて籠城する。
「ロー。わかってると思うが、お前はテントに入るの禁止な」
「わかってるよ」
用のカフェオレを見て、部屋に入るのまでは禁止しなかったコラソンに感謝した。なんだかんだ言って、彼はローに甘い。
「。カフェオレ飲まないか?」
テントの前にかがんで話しかけると、ちょっとだけはジッパーを下げて、隙間から伺うようにローを見た。明らかに警戒されている。
垂れ下がったウサギの耳が見えるようだ。警戒心の強い生き物は徐々に慣らすべきなのに、可愛くて触りたくて無理やり慣れさせようとしたら嫌がられるに決まっている。
やっと自分が失敗したことに気づいて、ローは素直に「さっきはごめん」と謝った。
「もうに許可なく触ったりしない。約束する」
出てきて欲しくてなるべく穏やかに言い聞かせる。ほだされたのか、は半分くらいまでジッパーを開けて顔を見せてくれた。
ローを警戒してか、テントから出ずにちょうだいと伸ばされた両手に、ローはカップを握らせる。