第5章 波乱の揺れ
「そういえば、ちゃんの親御さんには連絡したか? 心配してるだろ」
リビングでカップ麺が出来るのを待つ間、コラソンは急に保護者らしいことを言い出した。
「地震の直後に一回だけ電話つながって、連絡は取れたよ。俺ものこと頼まれた。必ずを家まで送るって約束したんだ」
少なからずびっくりした様子で、コラソンはローを見返す。
「ローお前、ちゃんの親御さんと面識あるの?」
「の家に子猫見に行った時に、おばあちゃんにだけ」
がまだ戻ってこないのを確認して、ローは「のお母さんは、去年地震で亡くなったらしい」と声をひそめてコラソンに伝えた。
コラソンは絶句し、「地震って、去年のH県か……」とつぶやいた。
「そうか。そりゃ地震怖いよなぁ……」
「コラさん。今更だけど、俺らここにいていいんだっけ?」
は余震を怖がっていた。去年のH県の地震は最初に大きく揺れたあと、しばらくしてさらに大きな本震が来たのだ。
「一応このマンションは首都直下を想定した耐震構造になってるって聞いた。避難所に移動するにしてもこの雨と停電だからかえって危ないし、東京の避難所ってすぐいっぱいになるらしいんだよ。家が安全なうちはとどまったほうがいい。一応余震警戒して、寒いけど玄関開けとこうか。出られなくなるのが一番まずい。あとベランダにハシゴが付いてるから、いざとなったらそれで避難かな」
コラソンの説明は納得できるものだったのでローは頷いた。
洗面所のドアが開く音がして、「が上がったかな」とローは立ち上がる。廊下まで迎えに出ると、『生まれついてのドジっ子です』のトレーナーを着たがいた。
「船長さん、おまたせ。お風呂空いたよ」
丸いほっぺをピンク色にさせては満面の笑みで言う。『生まれついてのドジっ子です』のトレーナーはコラソンサイズなのでには大きすぎて、太ももまで隠れている。待ち合わせはしたときはスカートだったので下にタイツを履いていたが、雨で濡れてしまったのか、今は細い素足をさらしていた。
停電でドライヤーが使えないので髪もまだ濡れていて、余計無防備に見える。