第5章 波乱の揺れ
「が着れるように置いてくる。コラさん、火見てて。触らないように」
「ロー俺な……忘れてるかもしれないけど、お前より年上で小学生じゃないんだぜ」
「へぇ、そうだっけ」
大げさに嘆くコラソンを冷たく流し、ローは脱衣所にの着替えを置きに行く。一応声は掛けたが、はまだ入浴中でハプニングは何もなかった。
「、着替え洗濯機の上に置いとく。良かったら着てくれ」
懐中電灯一つで風呂に入っているが、「はーい」と中から返事をした。声は明るく、風呂で少しでもリラックス出来たなら良かった。
「船長さん、ありがとう」
「ん? 服はコラさんがしまい込んで忘れてた奴だよ」
そうじゃなくて、との声は言う。
「ここまで連れてきてくれてありがとう」
にお礼を言われるのはなんだかこそばゆかった。こんな風にきちんをお礼を言われるほど、大したことは何もしてないと思う。
「コラさんの家がたまたま近かったら連れて来れただけだ。運が良かった」
知り合いが近くに誰もいないような場所だったら、ローに出来ることは何もなかった。コラソンが近くに住んでいたのも、決してローの功績ではない。
「一緒にいてくれて心強かったよ」
ぽつんと明かりが暗闇に一つ灯るだけの浴室を、思わずローはドア越しに見た。当たり前だが、くもりガラスで中の様子はまったく見えない。
は今どんな顔をしているんだろう。
「どういたしまして」
自分でもびっくりするくらい柔らかい声が出て、中がが笑った気配がした。
「……、風呂終わるまで、あとどれくらいかかる?」
「す、すぐ! そうだよね、船長さんも濡れちゃって寒いよね。すぐ交代するから!」
予想外の反応にローも慌てた。