第5章 波乱の揺れ
「最優先はちゃんの風呂かな。そのままだと風邪引くだろ」
ひどい雨だったので、傘を差してはいたものの、みんな全身濡れねずみだった。特にが寒そうで、くしゅんと小さなくしゃみがもれる。
「案内する。こっちだ」
さすがに知り合ったばかりの人間の部屋で風呂に入るのはかなり抵抗があるだろう。有無を言わせないために、ローはを多少強引に風呂場まで連れて行く。
「ローも一緒に入れば? そのほうがちゃんも入りやすいだろ」
「え!?」
コラソンからのまさかの提案に、が飛び上がる。コラソンがさらに何か言う前に、ローは「そんなことしない」と言い聞かせて懐中電灯を持たせるとを脱衣所に放り込んだ。
リビングに戻るとコラソンはソファの上でクッションを抱えて縮こまっていた。完全にホラー映画を見てる時の体勢だ。
「え……まさか付き合ってないの? ローが女の子連れてきたから、てっきりもう結婚前提かと」
「……コラさん、このドジは一生忘れないから」
飛び上がってコラソンは「ごめんって」とローに泣きついた。謝りながらまとわりついてくるが、どうにも「ローがもう一緒にホラー映画見てくれなくなったらどうしよう」というのが透けて見える。怖いなら見なきゃいいのに。
やらかしてバツが悪そうにしながら、コラソンはローにタオルを投げた。
「お前も拭いとかないと風邪引くぞ」
「…………」
投げられたタオルでローはゴシゴシとコラソンの頭を拭く。どう考えても風邪を引くとしたらコラソンのほうだ。人の心配ばかりするのだから。
「お前ほんと優しいよなー。俺が女の子だったらイチコロだよ」
「そう思ってんのはコラさんだけだよ」
はしゃいで泥遊びした愛犬を拭くみたいな気持ちだったので、ローとしてはちょっと後ろめたい。
女の子相手――特になら、絶対こんな乱暴にしない。