第5章 波乱の揺れ
しばらくして、コラソンのマンションに到着した。停電の影響でエントランスは真っ暗だったものの、オートロックは自動で解除されて自動ドアは開いていた。
家族向けの分譲もあるので、エントランスの応接スペースには余震を警戒した家族連れが何組か身を寄せ合っていた。
「うちは五階。……ちゃん大丈夫? エレベーター止まってるけど階段登れる?」
「う、うん……」
今地震が起きたらどうしようと、は不安そうにしている。
「おいで」
ローがの手を握ると、小さな手は冷たく震えていた。温めるように握り込んで、ローはゆっくりと階段を登る。
「散らかってるけど、どうぞ」
玄関の鍵を開けて中に招いたコラソンは、電気をつけようとして「あれ?」と言い出した。
「コラさん、停電」
「……そうだった。ダメだな人間、便利に慣れると」
代わりに彼は、LED式のランタンを付けた。
「お邪魔します……」
ローには何度も来たことのある部屋だが、は知らない場所なので緊張気味だ。
間取りはよくある2LDK。S区のマンションはかなり値が張るが、コラソンは数年前にこの部屋をローンで購入した。当時付き合っていた相手と一緒に住むつもりだったらしいが、現在彼は一人暮らし――推して知るべしだ。その辺のことはローも詳しくは聞いていない。
ドジっ子ではあるものの、コラソンは几帳面な性格なので部屋の中は整然としている。一時期インテリアにはまっていたので洒落た照明なんかが置いてあるが、停電中なので今日はおしゃれなライトの出番はなさそうだった。