第1章 身投げじゃなくて
噂が出回って告白はなくなり、代わりに『ストレス解消の申し出』が増えた。
後腐れがなければいい気分転換にはなったので、予定があえば遠慮なく申し出は受けた。一回寝たら彼女面でデートを求めてうるさいのもいたが、相手には困らなかったのでそういうのは全部着拒した。
病気と避妊にだけは気をつけて、持参した以外の避妊具は一度も使わなかったし、オーラルも避けた。
程よくストレスは発散できて、良いことだらけだと思っていたのだ。――心から。
「うわぁ……」
「本気で言ってんですかそれ……」
「控えめに言って最低ですね」
付き合いの長い悪友たちの容赦ない軽蔑の眼差しにローはうなだれた。
無事受験も終わった今となってはバカなことをしたと思ってる。「あなたの子供よ」と腹のでかい女がやってきてもおかしくない真似だった。
完全に空気が悪くなってしまって、ペンギンが「ラーメンでも食べに行きましょうか」と提案した。
シャチとベポが賛成し、がっくりしたままローも頷いた。
◇◆◇
「……あ」
商店街を抜けてペンギンが案内する新しいラーメン屋へと向かう途中、ローは見知った顔を見つけた。
「あ!」
店先のベンチに座ってソフトクリームを食べていた少女が立ち上がる。間違いなく、猫を助けようとして川に落ちたあの少女だった。
土曜なのに彼女は制服を着ていた。ラミも今日は模試があるからと朝から出かけて行ったからそのせいだろう。
かたわらにはスクール鞄もあった。間違いなく、ローが交番に届けた鞄だ。
「傘の人……!」
お互い名乗っていなかったので、少女は仮称でローを呼び止めた。
え、とシャチが眉値を寄せる。
「まさかキャプテン、ほうけ――」
手首の折れた利き手で思わず殴ってしまった。シャチは吹っ飛び、ローも痛みに身もだえる。
「だいじょぶ……?」
ソフトクリーム片手に、少女は心配そうに小首をかしげる。
妙に興奮した声音で、ペンギンが「誰ですか」とささやいた。非常に嫌な予感がする。