第1章 身投げじゃなくて
ローの様子にペンギンたちも親友の性格を思い出す。
こうと決めたら必ずやり遂げるし、そのために自分を追い詰めてしまうところもある。受験勉強で忙しそうだったし、正直ポイ捨て行為が腹にすえかねて距離を置いていたのだが、もっと話を聞いてやるべきだったと今更ながらに後悔した。
(そこまでひどかったか……?)
ペンギンたちの様子に自分の行いを振り返り、ローは肝が冷える思いだった。
外部受験を決めた頃から、まるで嫌がらせのように女子からの呼び出しが増えて辟易していたのだ。
断るのは神経を使うし、大半は名前も知らない相手だったから本当に苦痛で、忘れた振りや気付かなかった振りですっぽかしたことも何度もある。
勉強に集中したいのに呼び出され、断ろうにも「人生の一大事」と言われると無視するわけにもいかず、一時はそのストレスで成績も食欲かなり落ちた。
ローには知るよしもなかったが、実は学内には「トラファルガー・ローファンンクラブ」が存在し、抜け駆けは許さないという厳格な掟があったため、学内・学外を問わず、女子達は死に物狂いで牽制しあっていたのだ。
そのおかげでローは平和な学生生活を謳歌していたが、外部受験をすると噂が広まった瞬間、ファンクラブ会員たちは絶望で規律を失い、抜け駆けする女子が続出した。
おかげでローは多いときで日に三度も「人生の一大事」で呼び出され、代わり映えのしない告白を聞かされて、断るのに胃が痛むほど神経を使い、最難関と呼ばれる大学受験を決めたのに成績は過去最低に落ちた。
やさぐれて開き直って、もういっそ放っておいてほしてくて、ローは最低な選択をした。
『このまま断るか、ストレス解消の相手をするか選んでくれ』
ありったけの勇気を出して、一世一代の告白をしたきた少女にローはそう突きつけた。
初めてそう言った相手の顔を覚えていないし、名前もおぼろげだった。確か花の字が入っていたような気がするが、それも確かじゃない。
最低な男だと噂が出回って見向きもされなくなればいいと思ったのだが、予想外に彼女はローの「ストレス解消」を引き受けた。
実際ホテルに行ったら怖気付くと思ったのに、本当に最後までしてしまって、あるゆる意味で衝撃だった。