第5章 波乱の揺れ
コラソンの家はS駅のある区内にあった。とローがいる複合ビルからは、歩いて30分かからない距離だ。
あいにく酒を飲んでしまって運転はできないらしいが、家にはいるようで、電気はダメだが、水道とガスは出ているとのことだった。
ローは状況を説明し、を連れて身を寄せさせてもらえないかと頼んだ。二つ返事でオーケーがあり、ローはに説明した。
「親戚の家がここから近い。電車がいつ復旧するかわからないし、今晩はそこに行こう。明るくなるのを待つにしても、横になれる場所のほうがいいだろ」
はぼんやり頷いた。地震への恐怖で、あんまり冷静に物事を考える余裕がないようだ。
最悪おぶっていくことも考えたが、手を引くとは自分で歩いてくれた。
外はあいにくの豪雨だった。の折りたたみ傘と、コンビニで買った傘でなんとか進むが、時折突風が吹いて傘ごと飛ばされそうになる。
「、ごめんな。もう少しだから頑張ってくれ」
「大丈夫……」
ローに身を寄せながら、は上を気にしていた。電柱や信号機、高い建物。次に大きな地震が起きたら倒れてくるかも知れないものだ。
ローの手を握るの手は冷え切っていて、時折恐怖を紛らわせるようにぎゅっと握ってくる。ローにはそれを握り返すことしか出来なかった。
「船長さん、道わかる? 大丈夫?」
「ああ、何度も行ってるから。でも街灯まで消えると確かに道間違えそうだな」
普段なにげなく目印にしていた店も、停電で看板の電灯まで消えてしまっている。うっかりと歩くのに集中して、ふと現在地を確かめると「もうここまで来たのか」ということが何回かあった。
「ロー!?」
懐中電灯で照らされて、まぶしさに目を細める。大きな傘を差して長靴を履いたコラソンが、「早かったな」と驚いていた。