第5章 波乱の揺れ
「……」
スマホを返し、ローは力いっぱい彼女を抱きしめた。
「必ず家まで連れて帰る。家に着くまでそばにいる。怖いだろ。我慢しなくていい」
ぎゅっとローにしがみつくようにして、は震える声で絞り出した。
「早くここから出なきゃ。去年は、このあともっと大きな本震が来たの。家も、学校も、全部崩れちゃった……っ」
泣きじゃくるを抱きしめてローはなだめた。の恐怖は周囲に伝播する。周りの人間までパニックにするわけにはいかない。
(早く家まで連れて帰らねぇと……)
スマホで確認すると、この辺の震度は5強だったようだ。震源はK県の沖合で、そっちは震度6が出たところもあるらしい。
幸い、震源はローとの家とは反対方向だった。家のあたりは震度4で済んだようだ。
家族からもメッセージが来ていた。無事で家にいるらしく、こちらは心配なさそうだ。逆にローの状況をひどく心配された。
(電車がいつ復旧するかわからない。最悪朝か、2~3日か……タクシーも長蛇の列だろうな)
停電はまだ続いていた。信号も消えて、この闇では事故の危険性も高い。
少なくとも電気が復旧するか、夜が明けるまでは、車を運転できる誰かに迎えを頼む線もなしだ。
(一晩、どっかで過ごす覚悟がいるな)
なるべく人のいない、落ち着ける場所がいい。が泣きじゃくっても周囲の目を気にしなくていい場所だ。
しばし考え、ローはを抱いたまま電話をかけた。つながらなければ直接行こうと思ったが、幸いコール音が鳴って相手もすぐに出た。
『ローか!?』
「コラさん、今どこにいる?」