第4章 秘密のデート
シャッター音で撮られたことに気づいて、慌てては取り上げようとする。
「隠し撮りしちゃダメ」
「だけ写真持ってるのは不公平だろ」
目線があった写真が欲しいのでもう一度スマホを向けるが、クマでお面のように顔を隠されてしまった。
「クマ怪人の写真が欲しい訳じゃない」
「やー!」
力ずくで取り上げようとするが、も頑迷にクマを離さない。
「クマちぎれちまうぞ」
「そんなの猟奇殺人だよ!」
慌てて胸に抱き込むを斜め上から撮影する。上手く撮れなかった。
(こういうの苦手だ……)
創造性のある作業がローはとにかく苦手だった。目をつむってしまっているし、角度も変だ。スマホを覗き込んだにも「これは消して!」と言われてしまった。
「撮るなら可愛く撮って」
「わかった。努力はする」
しかしあいにく、ローが何度撮ってもを可愛くは撮れなかった。何枚か撮ったうちの1枚をは「これならいいよ」と言ってくれたが、自分の不器用さがうらめしい。どうしてもオペをするようにはいかない。
「こういうのはシャチやペンギンがうまいんだけどな」
「器用そうだよね」
「シャチはプラモ作るのが趣味だし、ペンギンは料理が上手い」
他にも手先の器用さが必要なことは二人共だいたい何でもそつなくこつなした。ローが苦手なのを見越してよく手を貸してくれたので、今まではあまりローは苦労したことがない。
「船長さんたち、本当に仲いいね」
「まあガキの頃からの腐れ縁だからな」
人見知りの激しいローには貴重な友人だ。シャチの彼女欲しさの暴走には本当に辟易したが、だからといって縁を切る気にはなれない。