第4章 秘密のデート
「来年だろ」
長い手足を生かしてローはクマをから遠ざける。
「やだやだやだ。今もらわないと、船長さん他の子にあげちゃうもん!」
ちょうだい、とは必死で訴える。楽しくて仕方なかった。
「どうしようかな」
「くれるって言ったのに~! クマさん詐欺だよ! 船長さんの極悪人!」
なんか罪状が重罪化してる。
「詐欺ならどうするんだ?」
「手配書作って貼っちゃうもん」
印籠のようにスマホをかざして、は絶賛意地悪現行犯のローの姿を連写した。バシャバシャバシャ、と報道陣に囲まれたようなシャッター音がしている。
「犯行激写!」
「容疑者かよ」
クマを抱えた姿が流出するのは避けたかったので、ローは観念してにクマを渡した。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう……?」
来年の誕生を祝われて、は困惑顔だ。そのちょっと困った顔がキスしたいくらい可愛い。
「ほら、これで詐欺じゃないだろ。写真消してくれ」
は頷いたものの、クマを抱えて上目遣いにローをうかがう。
「全部消さなきゃダメ?」
「俺の写真が欲しいって?」
冗談のつもりだったが、は赤くなって黙り込んだ。図星だったらしい。
(なんだこの可愛い生き物……)
クマを抱えてもじもじと視線をさまよわせているをローも撮影した。