第4章 秘密のデート
「誕生月のクマさんだ……っ」
雑貨屋の店頭に並べられていた、12色のクマのぬいぐるみには飛びついた。顔は同じだがそれぞれ微妙に装いが異なり、何かのスイッチが入ってしまったような熱狂ぶりだ。
「って誕生日いつだ?」
春生まれだった。ちょうど先々月で16歳。
と同じ誕生月のクマもピンクのリボンをしていて、ついさっき買ったの髪飾りのリボンといい感じにおそろいだ。
「買ってやろうか」
「え!」
慌てては抱えていた自分の誕生月のクマを戻した。
「い、いらない」
「なんで。欲しいんだろ?」
レジに持っていこうとしたローから取り上げて、は陳列棚に戻した。
「買ってもらう理由がないもん……」
(……う)
あまり高額でもないので軽く考えてしまった。は名残惜しそうにしながらも、自分で買うには小遣いが足りないのか、捨て猫を見ないふりするかのように、クマから顔をそむけて離れようとする。
「……ちょっと待っててくれ」
店からちょっと離れた施設内のベンチにを残して、ローは雑貨店に戻るとの誕生月のクマを会計した。誕生日用だと伝えてラッピングしてもらい、困惑顔ののところに戻る。
「来年の誕生日プレゼント、今もらうのと、当日にもらうのどっちがいい?」
「誕生日? 私の?」
「ああ」
誕生日プレゼントとしてなら渡してもいいだろうという打算的な判断だった。来年の誕生日のころには多分もうないので、今買ってしまう理由が必要だった。
「……じゃあ、来年の誕生日に」
手はクマに伸びそうになりながら、は「お預け」を選択した。すぐ欲しがると思ったので、ローにはちょっと意外だった。
「いいのかそれで?」
「楽しみに待つからいいの」
でも一回だけぎゅーさせて欲しいと頼まれ、ローは包みをに渡した。
「……忘れて他の女の子にあげないでね」
上目遣いで言われて楽しくなってくる。
「どうだろうな」
取り返して意地悪く笑うと、「やっぱり今欲しい!」とは両手を伸ばしてきた。