第4章 秘密のデート
「すごい写真がいっぱいあるよ。春は山桜で山がピンクになるの。夏はみんなで橋から飛び込むし、秋はもみじがふかふかベッドみたいになるんだよ。冬は道の横にみんなで小さな灯籠作ってロウソクを灯すんだ」
故郷のことを語るの表情はイキイキとしていた。
ずっと聞いていたいなと思いながら、ローはの手を握る。
「……迷子になんかならないよ」
「今日は彼女の振りしてくれる約束だろ」
「そんなのしてない……」
小さな声は聞こえなかったことにして、複合ビルの中を見て回る。
「これに似合いそうだな」
雑貨屋の店先で見つけたリボンをに当てると、彼女はハッとした。
「それが目的?」
「ん?」
「甘い言葉で釣って、リボンを買わせようとしてるんだ……」
何やらショックを受けては震えている。
「極悪人はもうちょっとわかりやすい格好して欲しい」
「例えばどんな?」
ちょっと悩み、はローの手を引いてサングラスコーナーに連れて行った。いろいろ物色して「これかな?」とローに合わせる。
「いい感じにマフィアみたいだよ」
「マフィアがリボンのセールスするか……?」
「こっちはもうちょっと渋くて、ヤクザのお兄さんみたい」
「、俺で遊んでるだろ」
サングラスをローに合わせながら、は「仕返しだよ」と笑った。
「ふざけたこと言ってると、リボン100本買わせるぞ」
「そんなセールスには引っかからないもん」
「へぇ、じゃあ枕営業でもしないとダメか」
の髪をかきあげて耳元で「何でも俺の言うこと聞く体にしてやる」とささやくと、は真っ赤になった。
「そういう営業はお断り!」
「なんで。サービスするのに」
「……!! 船長さん、私で遊んでるでしょ!」
「バレたか」
キーキー怒るにローは声を出して笑ってしまった。