第4章 秘密のデート
「見間違いくらい誰にでもあるだろ」
「絶対口実のくせに」
その通りなのでローは話題を変えた。
「ほら、ラーメン食っちまわないと伸びるぞ」
ラーメンを食べ終えて杏仁豆腐が来ると、は想像通り顔を輝かせた。しかしローの視線に気づくと、ハッとしてうつむく。
「どうした?」
「……船長さんに笑われたから。恥ずかしい」
「笑ってない。その顔が見たかったんだ」
は余計に赤くなってしまった。そのまま顔をあげてくれないので、ローは手を伸ばしての髪をかきあげる。
「あんまり見ないで……」
ローの視線には食べにくそうにしている。
(その顔反則だろ……)
他の誰にも見せたくない。男には特に。
は急いで食べきると、「早く行こう」とローを急かした。
「もっとゆっくり食べれば良かったのに」
「混んでたし、次の人も待ってたから」
外ではパラパラと雨が降り出していた。準備よく用意していたが、カバンから折り畳み傘を出してローを入れてくれた。
「もっとくっつかないと濡れるぞ」
ローのほうが背が高いので傘を持って、を抱き寄せる。
「船長さん、絶対わざとやってるでしょ!」
「さあ、何のことだか」
笑ってローはすっとぼけた。
まだと遊び足りないので、雨宿りだとそそのかして近くの大きな複合ビルに行く。
コンビニがあったので当初の目的のチラシのコピーを済ませた。
「すごい。都会のコンビニはこんなことが出来るんだ」
「田舎のコンビニもサービスは一緒だろ」
「えー。一番近くにあったお店は、名前に『こんびに』ってついてたけど、8時で閉まってたよ」
「それはコンビニの名前を冠したただの商店だろ……」
商標違反で訴えられそうな話だ。
「前に住んでたところの写真とかないのか?」
「アルバムはあるけど、おばあちゃんの家だよ」
「スマホに入ってないのか」
「スマホ買ってもらったの、こっちに来てからだもん」
「残念だな」
大げさに肩を落とすと、「今度見せてあげる」とは約束してくれた。