第4章 秘密のデート
「これは写真を見て先生が描いてくれたやつ」
「リアルだな」
一匹だけ次元が違った。でも教師が描いた猫より、の猫のほうが生き生きしている。
「が描いた奴のほうが俺は好きだけどな」
「……女たらしはすぐそういうこと言う」
まだ詐欺を疑っているのか、はささっとスケッチブックとポスターを隠してしまった。口をへの字に曲げて、「だまされないぞ」という構えだ。
頬杖をつきながら、ローはそれをニヤニヤ眺めた。
(本当に可愛いな……)
には悪い男でいたくなるのはどうしてだろう。
振り回して、ドキドキさせて、忘れさせないようにしたい。
注文の品がやってきて、二人は手を合わせると、今日の目的を食した。
「、チャーハン少しやろうか?」
「ほんのちょっとでいいよ」
「ほら」
レンゲを差し出すと、は固まった。
冗談だと取り皿を頼もうとして、それより速く、がレンゲに食いついた。歯が当たって、カチンと振動が指に伝わる。
もぐもぐごっくんと急いで飲み込み、は「ふふん」とばかりにローを見た。してやったりという顔だ。
(やり返したつもりなのか)
浅はかな考えだと思い知らせるようと、ローはが食いついたレンゲで、次のチャーハンをすくう。
全然抵抗のない様子に、はうろたえ始めた。
内心ほくそ笑みながら、ローはが一度使ったレンゲでチャーハンを自分の口に運ぶ。
「あ……っ」
「ん?」
すっとぼけてローはゆっくりとチャーハンを咀嚼した。わざとゆっくり飲み込んで、「もっと食べるか?」とレンゲを差し出す。
「も、もういらない」
ラーメンを食べるのに忙しいからと言わんばかりに、は自分の食事に没頭し始めた。意図的に避けているのだろう、ラーメンにしか視線が向かず、ローとは目が合わない。
それが面白くなくて、ローはの口元に手を伸ばした。指で口端をぬぐうと、は真っ赤になった。
「米粒ついてるような気がしたが、違った」
口をパクパクさせて、は怒った顔で唇に触れる。
「……船長さんの女たらし」
声は低く、恨みがましい。