第4章 秘密のデート
夕飯時のせいか、ラーメン屋には数人程度の『待ち』が出来ていた。
それほど待たずに入れそうだし、の頭がすっかり「杏仁豆腐」になっているので待つことにしたが、店内には待つスペースがなく、外に並ぶしかなかった。
「天気悪くなってきたな……、寒くないか?」
「パーカーあるから平気」
風が冷たくなってきたのではローからカバンを受け取り、もこもこパーカーを取り出した。
その際、パラパラと名刺が落ちた。
「どうした、それ?」
「待ってる時にもらったの」
芸能事務所の名刺だった。しかも何枚もある。
「……これ、何かわかってるか?」
「セールス?」
「そうだな」
ちょうど順番が来たので、ローは店内のゴミ箱に全部放り込んだ。
「詐欺の勧誘だから、もう受け取らなくていい」
「都会怖い……」
田舎少女はそんな可能性は考えてなかったらしい。無防備すぎて心配になる。
「街で知らない人間に声をかけられても、連絡先交換したりするなよ」
「猫を助けてくれた人でも?」
助けたのはだが、確かにそんな出会いだった。
「……俺はを騙してねぇだろ」
「そうだっけ……?」
色々からかったせいか、は不審顔だ。
二人用の小さな席に案内されると、ローはミソラーメンと半チャーハン、は醤油ラーメンと杏仁豆腐を頼んだ。
「見て見て、新作」
カバンから里親募集のポスターを取り出して、は自慢げにローに見せた。相変わらず全部アナログだが、猫のイラストが格段に上手くなっていた。
「どういう魔法だ?」
「猫ちゃんの可愛さを表現するために、美術の先生に色々教えてもらったの」
スケッチブックを取り出して、は練習の成果を見せた。段々と上手くなっているのがページをめくるごとにわかって、面白い。