第4章 秘密のデート
「ほら行こう。杏仁豆腐が美味いから、きっとも気に入る」
杏仁豆腐、とは顔を輝かせた。手を引くローのことも、もう気にしていないようだ。
「杏仁豆腐、杏仁豆腐」
はお経のように唱えた。妙に必死だ。
ローとつないだ手を気にしないようにしているらしく、それが面白くないローは、ぎゅっと握る力を強めてみる。
びくっとしてはローを見た。
「やっと目が合ったな」
やりすぎた自覚はあるから、それだけのことがすごく嬉しい。
「……私、帰りに船長さんの彼女に刺されそう」
今も監視されてるんじゃないかと、は不安そうに周囲を見回した。
「そんなのいない。がなってくれるか?」
「そういうことポンポン言う人は無理……」
「う」
見事な切り返しだった。冗談だったので本気にされても困るのだが、断られると意地悪したくなる。
「じゃあ今日だけ、彼女の振りしてくれ」
つないでいた手をいったん離して、指を絡めてつなぎ直す。
驚愕しては固まった。
「船長さんは……」
「ん?」
「悪い男の人のお手本みたい……」
もはや抵抗する気力もないのか、は疲れた声で言う。
「だけだけどな」
「まだ言うんだ……」
本気にした様子はないのに、の頬は赤いままだ。それがすごく嬉しくて、楽しかった。