第4章 秘密のデート
「あの、船長さん、手……っ」
「ん? 人が多いから、はぐれると大変だろ。小さいし」
「小さくないよ! 去年から2cm伸びたよ!」
「もうちょっとデカくならないと探すの大変だからな」
スラスラと出てくる自分の口にローはびっくりしていた。この間のドラマの悪影響だろうか。
「はぐれないようにするから! だってこれ……っ」
デートみたい、とかすれる声が聞こえて、意地悪い気持ちになる。
「お望みならラーメン屋じゃなく、もっとデートっぽい店に行くか?」
「い、いらない。ラーメンがいい!」
緊張しているのか、はラーメン屋以外は断固として受け入れそうになかった。
(まあ、追々だな……)
あんまり振り回しても可哀想だ。とりあえず今日は、杏仁豆腐に顔を輝かせるところが見れたらそれでいい。
「おっと」
せまい道をウーバーイーツの自転車が猛スピードで走ってきて、とっさにローはをかばった。
「大丈夫か、」
「大丈夫じゃない……っ」
動揺も限界に来て、とうとうは怒り出した。
「船長さんの女たらし! そういうのは彼女さんにやって!」
(……なんだこれ。すげぇ楽しいな。ゾクゾクする)
は怒っているが、嫌がってはいない。本気で怒っているわけでもなく、怒ったふりをしているだけだ。
それがわかるから、愉快で仕方ない。
「嫌だったか?」
「そういうことじゃなくて……っ」
「ん?」
全然わからないという顔で意地悪く聞き返すローに、は「もういい……」と力なくうなだれた。
「悪いな、女心とか疎くて。何か嫌だったら言ってくれ」
の手を握りながら、ぬけぬけとローは言ってみた。すごく楽しい。
詐欺師を見るような目でには見られたが、そういう反応すら楽しい。