第4章 秘密のデート
「び、びっくりするから急に耳触っちゃダメ……っ」
恥ずかしそうに耳を押さえて、は言った。思わずローは笑ってしまった。
子供のころ、動物園の触れ合いコーナーでウサギを触る時、飼育員が同じようなことを言っていたのを思い出したのだ。
『ウサギさんは臆病で恥ずかしがり屋さんなの。優しく接してあげましょうね』
むちゃくちゃにキスして、ぐちゃぐちゃに抱きたい。でもそれ以上に大事にしたくて、優しくしたくて、両方が相反しながら成立していて奇妙な気分だった。
「……が嫌なら、もう触らない」
安心させるようにゆっくり両手を上げると、はホッとした顔をした。
「ほら」
ローが差し出した手を、は不思議そうに見つめた。
「荷物よこせ。重そうだから持つ」
「だ、大丈夫だよ」
固辞しようとしたから、ローはひょいとカバンを取り上げた。本当に重い。
「何が入ってるんだ。ノートパソコン?」
が使いこなす姿がまったく想像できないが。
「えと……上着とか、お財布とか、色鉛筆とか」
「女の子だな」
思わず笑うと、はまた赤くなった。ローは反対側の手を差し伸べて「そろそろ行くか」とを促した。
「船長さん、手はもういいの?」
「ああ。ギブス外れたからもう大丈夫だ。ヒビだけだったしな」
それでもうろたえるの手を握って、目的のラーメン屋に歩き出す。先日ペンギンたちと行ったところはイマイチだったので、わざわざちょっと遠いラーメン屋を選んだ。
ラーメン屋なのになぜか杏仁豆腐が絶品で、きっとは気に入ると思ったのだ。美味しさにびっくりしたり喜んだりする姿が見たい。