第4章 秘密のデート
「……二人は来れない」
びっくりしてはローを振り返った。
(楽しみにしてたのに悪いことをしたな……)
やっぱり日程を改めるべきだったろうか。強引に強行したのは、ひとえにローがに会いたかったからだ。
「二人に何かあったの?」
心配そうに見上げられて、罪悪感からウソを付けなかった。
「合コンでいい雰囲気になった相手がいて、誘えなかった」
ウソではない。ウソでは。
その後どうなったかはわからないが。
「シャチが言ってた合コン? 二人も行ってたの――」
はハッとしてローを見た。
「……ひょっとして船長さんも? 予定ってそれ?」
なんでそんなに勘がいいんだ。名探偵か。
「付き合いだ。シャチがどうしてもって言うから」
自分で言ってて、言い訳にしか聞こえない。反射的に謝りそうになって、自らのそういう心理にローは困惑した。
「船長さんモテるもんね」
はなぜかふくれっ面だ。でも拗ねているのも可愛い。
「船長さんも誰かといい雰囲気になったんじゃない? 無理して来てくれなくても良かったのに」
「それはない。との約束が優先に決まってるだろ」
びっくりしては目を見開き、次にうつむいてぎゅっと鞄の持ち手を握りしめた。顔は見えないが髪からのぞいた耳が真っ赤で、ひょっとして熱でもあるんだろうかとローは手を伸ばす。
「ひゃん!?」
耳にローの手が触れた瞬間、は飛び上がった。
「悪い。びっくりさせたか」
耳を押さえるは顔が真っ赤で、うるんだ目で非難するようにローを見る。
男の前でそんな顔したら、押し倒されて全部食べられても文句は言えない。全部が悪い。――本能が悪魔みたいに囁いて、理性がそんな本能を一蹴した。その理性も一緒にどっかに転がり落ちて、何も考えられない。
ローはただじっと赤くなるを見つめていた。