第4章 秘密のデート
乗降客数が世界一多いとギネス記録にも認定されている駅に降りた途端、ローは失敗に気づいた。
(ここで待ち合わせするんじゃなかった)
どっちを向いても人人人だ。目的のラーメン屋に近い出口で待ち合わせたが、そこも同じく待ち合わせの人間でごった返していた。
(が迷ってねぇといいが……)
連絡しようとして、ローはを見つけた。
「……っ」
は特に目立つ場所に居たわけではなかった。ただそこだけ空気が明るい気がして、無意識に目がとまった場所に彼女がいたのだ。当然のように。
不安そうに周囲を見回していたは、同じように人混みの中からローに気づき、顔をほころばせた。
「船長さん!」
心臓を鷲掴みにされたような心地がした。駆け寄ってくるを反射的に抱きしめそうになる。
は猫を見に行った時よりも女の子らしい、リボンのついたカットソーとスカート姿だった。髪は片方にまとめて結んでおり、上から下まで全部可愛い。
しげしげと見つめるローには首を傾げた。
「……今日、何かあったのか?」
まさかデートとか。合コンとか。誰のためにこんなに可愛くしたんだろう。
「午前中、おばあちゃんと買い物に行ったくらいだよ」
不思議そうな顔をされて、やっとローは順番が違うことに気づいた。
「すごく可愛い」
言ってから、まるでナンパだと気づいた。女の子に面と向かって可愛いなんて初めて言った。
びっくりしては目を丸くした。同時に頬が桜色に染まり、「おばあちゃんが買ってくれたの」と小さな声で言う。
(なんだこの可愛い生き物……)
キスしてどっかホテルに連れ込んで泣きじゃくるまで、ぐちゃぐちゃにしたい。
(……待て。何考えた俺?)
自分の発想にローは硬直した。の顔がまともに見られない。
同じく気恥ずかしさでローの顔が見られないは気付かず、身を乗り出して改札のほうを見る。
「ペンギンとベポ、遅いね」
は落ち着かない様子だ。そわそわしながら、二人が合流するのを待っている。