第3章 地獄の合コン
「髪キレイだね。今度カットモデルしてくれない?」
「高いわよ?」
ペンギンはナミのロングヘアを褒めそやし、
「うちの母がさー、リビングのでかいテレビで海外ドラマ見たいって言ってるんだよね。スマホじゃ小さくて字幕が見えないって。あんたやれる?」
「もちろん! 家まで行こうか?」
シャチはノジコに便利に使われる未来しか見えないが、ものすごく幸せそうだ。
あぶれたビビがこそっとローのところにやってきた。
「なんだかみんな、いい感じですね」
僻むでも嫉妬するでもない、微笑ましい声音にローもつい「そうだな」と頷いた。
「良かったら私達も連絡先交換しません?」
他のメンツが交換しているのに嫌だとも言えず、ローは言われるままにビビとIDを交換した。
「最初に言っとくが、返信は期待するなよ。文字打つのが面倒くさい」
「ふふ、見るからにそんな感じですもんね」
気にした風もなくビビは頷く。
夢見が悪かったせいか、ずいぶんと気構えて来たのだが、合コンは思ったより全体的にいい雰囲気だ。ローはなんだか毒気が抜けてしまった。
「どうして医者になろうと思ったんですか? やっぱり家が病院だから?」
雑談として尋ねられ、ローは少し考え込んだ。思えばそんなことを聞かれるのは初めてだ。
ローの家を知っている人間は、病院を継ぐためだろうと何の疑問も持たない。悪友たちでさえそうだった。
「もちろん親が医者だった影響はあるが……単純に面白そうだろ」
「医学が?」
びっくりしてビビは目を瞬いた。
「人間の構造が。この世で一番複雑で繊細な、生きた精密機械だ。それに手を入れるオペが面白くねぇ訳ねぇだろ。この世で一番難しい作業だ。考えただけでゾクゾクする」