第3章 地獄の合コン
「俺はシャチ。パシフィスタ工業技術専門校で電気工学の勉強中。壊れた家電とか修理するの得意だよ」
「ベポだよ~! ビッグ・マム調理製菓専門学校でお菓子の勉強中。甘い物大好きなんだ~」
「ペンギン。美容師目指して専門学校に通学中。俺に髪洗って欲しい人いる?」
「トラファルガー・ロー。……ハート大に通ってる」
ローは無難にやり過ごそうとしたが、ナミとノジコの目がきらんと光る。
「医学部なんでしょ?」
「トラファルガー病院の跡取りって聞いたよ」
「……さあ。人違いだろ」
げんなりしながらローは否定した。今日はシャチの慰め会として参加しただけだし、自分のことは放っておいて欲しい。
「またまた~。有名人の自覚ないの? あんたと合コンできるって噂が立って、すごい競争率だったんだから」
「え、そうなの?」
びっくりして尋ねるビビに、ノジコが答える。
「最終的に抽選になったけど、倍率25倍以上だったって話だよ」
へぇ~とベポまで感心した声を上げる。幹事のシャチに視線が集中し、彼は「まあそれくらいだったかな」と苦笑いした。
そんなに貴重な場だったのかと、ビビは居心地悪そうに居住まいを直した。
「全然知らなかった。友達に誘われて一緒に申し込んで、私だけ当たっちゃったの」
「わ、わたしもです……」
同意したのはしらほしだった。
「あ、兄たちが引っ込み思案を治すようにって勝手に申し込んでしまって……すみません」
真っ赤になってしらほしは俯いている。人と話すのが苦手なようで、握りしめた拳が震えていた。
「その鯛焼き、可愛いね!」
屈託なく話しかけたのはベポだった。どこかシロクマに似た悪友は、非常におおらかでこういう時に頓着しない。
鞄に付けていたキーホルダーを褒められて、しらほしは少しだけ笑った。
「鯛焼き、好きなので……だってお魚の形をしたお菓子なんですよ。生地を焼いてアンコを挟めば十分美味しいのに、どうして最初に作った人はお魚の形にしようとしたんでしょうね」
「うーん、海に帰れるように? 大漁になってお客さんもたくさん来てくれるようにかな」
「まあ」
ベポの頓珍漢な仮説にしらほしは笑った。海から鯛焼きが揚がったら塩辛い上にべしょべしょになりそうなものだが、そこから派生して二人は惣菜鯛焼きの可能性について盛り上がり始めた。