第3章 地獄の合コン
(どっか行くか……)
講義が終わって家へと帰る道すがら、ローの頭にあるのはそればかりだった。
楽しい予定が欲しい。切実に。
(せっかく受験終わったし……そういや免許取るのも途中だったな)
春休みに教習所に通う予定だったのだが、女絡みのトラブルが続出してそれどころではなくなってしまったのだ。
受験のストレス解消を理由に、ローは複数の女と体だけの割り切った関係を持った訳だが、彼女たちのほとんが何故か『受験が終わったら正式に付き合える』と思っていたらしく、春休みになった途端、大変なことになった。
詰め寄る女たちに加え、『もてあそばれた!』と主張して彼氏を連れて殴り込んでくる女までいた。彼氏がいるなら他の男と寝るなよとローは心の底から思うのだが、『彼氏』は都合よく脚色されたストーリーを頭から信じて殴りかかってくるので応戦するしかなかった。
その結果がギブスのはめられた手首だ。相手が3人がかりでもローは無傷だったが、向こうの誤解が解けて話は解決したと思ったら、後ろからタックルを受けて変な転び方をしたのだ。不意打ちというか闇討ちに近い。
その後、彼女にさえ『そこまでみみっちい男だと思わなかった』と言われていたので向こうはもっとダメージが大きかったとは思うが。
最寄り駅について何とはなしに商店街を通ると、先日もいたベンチでがソフトクリームを食べていた。
「船長さん!」
嬉しそうに笑っては手を振ってくる。
「いま帰りか?」
「うん。今日は暑いからちょっと休憩」
くったくのない言い方にローは笑った。今日は確かに暖かいが、夏日というほどじゃない。
「今からそんなこと言ってたら、毎日休憩することになるぞ」
「こっち暑いんだもん。アイス食べないとバテちゃう」
「前はどこにいたんだ?」
聞くとかなり北の方だった。向こうはまだ上着が手放せないらしい。慣れなくて疲れちゃう、とはぼやいた。