第3章 地獄の合コン
ラーメンを食べ終わる頃には「一回くらいは付き合うか」という気持ちになっていた。メンヘラ化のすさまじさですっかり忘れていたが、に振られた自棄もあるのだろう。
タイミングよくシャチから電話がかかってきて、ため息一つでローは通話ボタンを押した。
『キャプテン!? 合コンの日程見てくれました!? すっぽかそうなんて考えてるなら――』
「行くから爆撃はやめろ」
先手を打って宣言すると、びっくりしてシャチは黙った。
『え……本当に? 俺を黙らせる方便じゃなく?』
半信半疑になる程度には嫌がられている自覚はあったようだ。ローは呆れ果てた。
「女はしぼったんだろうな?」
『あ、ええ、はい』
「一回きりだぞ」
『はい』
電話の向こうでシャチは神妙に頷いている。主導権が戻ってきたのを感じ、ローは釘を刺した。
「全員俺と寝ることになっても文句言うなよ」
シャチは絶句した。それに満足してローは通話を切る。もちろんそんな気はさらさらないが、期待値をあらかじめ下げておけば、つつがなく終わっただけでシャチは「いい合コンだった……キャプテンに荒らされなくて」と満足するだろう。
そして二度と誘って来ないはずだ。
(ん……?)
視線を感じ周りを見回すと、周囲の男たちがみんな「こいつマジか」みたいな目でローを見ていた。厨房の店主さえ麺を湯切るのも忘れてローを凝視している。
『お兄ちゃん、そういうトコだよ?』
脳内でラミがうるさい。食券制で金は払い終わっていたので、ローはさっさと店を出た。