第3章 地獄の合コン
生後二週間の子猫の世話を舐めてるのだろうか。6時間おきに注射器タイプのシリンジでミルクをやらなければならないのだ。
学校に行っている昼の一回こそ祖母に頼んでいるが、夜はタイマーをかけて自分でやっているとは言っていた。
合間にポスターを描いて真面目に里親を探しているのに、冷やかしには腹が立つばかりだった。
女たちからのチラチラとした視線がうっとうしく、ローは足早に構外へ出た。自意識過剰と言われても徹底的に避けることで面倒が減らせるならその方がいい。
なるべく女のいない店を探し、小汚ないラーメン屋に入る。ラーメン道楽のペンギンに付き合ってラーメン屋は色んなところに行ったので、あまり抵抗はなかった。
いかにも頑固親父という感じの中年と、バイトが一人で回している。客層はよほどのラーメン好きという風の男たちばかりだった。
(……美味い)
味は期待していなかったのに、まさかの感動だった。店主の顔に似合わずスープがすっきりとしていて、それでいて風味が複雑だ。これまで食べたラーメンの中でも3位に入る味だった。ほかはかなりの有名店で並んだ記憶があるから、大学の近くに、すぐ入れるこんなラーメン屋があってくれると嬉しい。
(今度ペンギンも誘うか……)
これは誘う価値があるだろう。
連絡しようとスマホの見ると、シャチからのメッセージが170件も溜まっていた。
(メンヘラかあいつ……っ)
どう考えても普通の人間が数時間で送ってくる量ではない。中身を見るとせっかくのラーメンの味がわからなくなりそうで、ローは液晶を下にしてスマホを遠ざけた。
(合コンか……)
正直ローにはシャチがどうしてそこまで執着するのかわからないが、大学に入学してから身にしみたものもある。高校時代、防波堤になってくれていた悪友たちのありがたみだ。
少なくとも高校時代はこうして、食事をする場所に困ることはなかった。