第3章 地獄の合コン
講義を受けながら、ローの頭はどうやって合コンを回避するかでいっぱいだった。
すっぽかすことには一抹の罪悪感もない。しかしその場合、シャチはローが来るまで第二、第三の予定を立てるだろう。その間ずっとこのストーカーみたいな着信が来るのは勘弁してもらいたい。
(行けない正当な理由を作らねぇと……彼女でも作るか)
本命に夢中だからと言えばシャチはまた騒ぎそうだが諦める気はする。
さらに彼女の友達を紹介してやれば黙るだろう。
あとはつつがなく『本命彼女』と別れればミッション完了だ。
女心を弄ぶことになるとはローは考えなかった。ダメ元のお試し関係くらいの心境だ。ローには打算しかないが、奇跡的に気があって本当に付き合うことになるかもしれないし、騙す気は一切ない。
「ねぇ、ローくんの家って、あのトラファルガー病院って本当?」
話しかけてきた隣の女子をローはげんなりした気分で見た。
医大とはいえ、1、2年は教養科目が主なので、ほとんど興味もなくローは後ろの席に座っている。小声の内緒話くらい問題ないが、話題がローにとってはほぼ地雷だった。
(つーか、女子がほとんどこの辺に集まってないか……?)
広い講義室なのに、ローの周辺にだけ密集している。女子のほぼすべてがだ。
突き刺さるような男子の睥睨や、顔をしかめる教授の視線にもたった今気づいた。ひょっとすると合コンよりまずい事態かもしれない。
「いろいろ教えてほしいな。ねぇ、連絡先交換しない?」
大学に入ったらミーハーな女子たちの付きまといはなくなると思っていたのに、悪化した。
自力で医大に入った上、化粧で見栄えもそこそこ良くなった女たちは過剰なほどの自信に満ちあふれていた。断られるとは微塵も思っていない表情だ。
ため息をこらえてローは席を立つと、荷物を持って一番前の席に移動した。講義の内容には一切興味がないが、あの女たちから離れられるなら何でもいい。
(大学で適当に見繕って彼女を作る線はなしか……)
トラブルになる未来しか見えない。うめいてローは講義に集中した。