第2章 猫を見に行こう
「女の子の連絡先なんか消しても困らないほど持ってるくせに」
ローにだけ聞こえる声でシャチはぼそぼそ言う。
(持ってない。全部消した)
受験は終わったし、トラブルも多いし、あげくに手首にヒビまで入るし――全部面倒くさくなったのだ。でもそれを言うとシャチが面倒くさいことになりそうで、ローはしれっと無視するに留める。
ぽこんと音がして、からスタンプが送られてきた。可愛いネコのイラストで『よろしくお願いします』と書かれていた。
『よろしく』
あまりスタンプを使うことがないので、ローは短文を返す。
返信が来るとは嬉しそうに笑った。
(本当に可愛いな……)
この時はまだ、手を出すつもりはなかった。――本当に。