第2章 猫を見に行こう
「え、ちょ――!」
取り返されないうちにと、ローは用意されていた割り箸でさっさとお好み焼きにかじりつく。
(油断してるからだ)
本人に手は出してないからいいだろと、ローはしてやったりの気分だった。
散々悪友たちに女たらしの人でなしのように扱われて、ムカついていたのだ。これくらいの意趣返しは許されるだろう。
「船長さん、ソースかけたほうが美味しいよ」
「ああ、頼む。……また名前忘れたのか?」
忘れてないという意思表示に、はローのお好み焼きに「ローさん」とソースで書いた。取り返せなくなってペンギンとシャチが悔しそうに歯ぎしりしている。いい気味だ。
「あとマヨネーズと、かつおぶしと、青のりと……」
は楽しそうに追加でトッピングしてくれる。それを見てシャチが「早く次の焼いてくれ!」とペンギンを急かした。
「いいなぁ、美味しそう。キャプテン一口ちょうだい?」
腹をすかせたベポに切ない目で見られて、さすがにローも拒めず、一口譲ってやった。「ああああ」とシャチが何か言っているが知るか。
「船長さんは、お医者さんになるの?」
ダイニングテーブルのイスに座って、は行儀よく食べている。しかし動作がいちいち小動物っぽくて可愛い。
船長さんという呼び方が気に入ったようなので、苦笑してローは頷いた。名前はもう覚えてくれたようなのでいいだろう。
「その予定だ」
「すごいなぁ。頭いいんだね」
「勉強苦手か?」
は深刻な顔でうつむいた。
「よくわからないのは数学と、物理と、化学と、生物……」
「理系全般だな」
しょんぼりとは肩を落とした。
「……勉強、見てやろうか」
ローの提案にはパッと顔を上げた。
「ほんと?」
「今日の礼に。一回だけな」
ペンギンとシャチが大ブーイングした。