第2章 猫を見に行こう
最寄り駅が同じとはいえ、の家はローの家からは歩いて30分ほどの距離だった。
「ガキの頃はずいぶん探検したと思ったけど、この辺は来たことないですね」
「俺、地図なしじゃ帰る自信ないよー」
悪友4人組が勢揃いして、地図アプリとにらめっこしながら入り組んだ住宅地を進む。
「……まずい。俺、盛大なミスに気づいた」
深刻な顔をして言い出したシャチに、何事かと振り返る。シャチの視線は4人がそれぞれ持っている手土産に注がれていた。
「みんな、中身は?」
「カステラ」
「大福」
「プリン」
「シュークリーム」
かぶってはいない。かぶってはいないが。
「って何人家族……?」
「わかんないから、つい多めに買ってきたけど……」
「どれも日持ちしないな」
「なんで相談しなかったんだろ」
まさかの事態だ。悩んだ結果、あまったら近所にでも配ってもらおうということになった。
「この辺のはずですね」
住所を聞いたシャチが地図アプリとにらめっこしながら周りを見回す。
「の家って一軒家?」
「住所だとそのはず。地図を見るとかなりデカそう」
「……あれか?」
川沿いの立地に豪邸が建っていた。古い平屋だが、隠れんぼできそうなくらい庭が広い。
「すげー。ちゃんってお嬢様?」
「最近越してきたって言ってたぞ」
「表札出てないね。ごめんくださーい!」
チャイムを押してベポは元気よく声をかけた。表札がなかったら普通はもっと慎重になるもんじゃなかろうか。
焦る3人を尻目に「はーい!」と明るい声がして、が中から門扉を開けた。
「いらっしゃい! 入って」
休日なので、はフリルのついたブラウスにショートパンツ姿だった。艷やかな栗色の髪をお団子にしており、とても可愛い。