第2章 猫を見に行こう
「……受験が終わるまではお兄ちゃんに言わないようにってママが言うわけだ。お兄ちゃん、変なとこ繊細だもんね」
「ちょっと待て! お袋も知ってるのか!?」
ラミは失言に気づいて「しまった」という顔をした。でももうバラしちゃったので、いいや言っちゃえとばかりに白状する。
「病院にいきなり『お兄ちゃんの子供です』ってお腹の大きい人が来るかもしれないんだよ? お兄ちゃんだけの問題じゃないでしょ」
「親父にも話したのか?」
「私が話したのはママだけ。ママがパパに話したかどうかは知らない」
めまいがしてきた。部屋に戻ろうとするローに、ラミはトドメを差す。
「誰と付き合おうとお兄ちゃんの自由だけど、私の後輩に手を出すのはやめてね!」
「出さねぇよ……」
力なく約束してローは部屋に行くとベッドに倒れ込んだ。
(何なんだ今日は。厄日か? 人生最悪の日か?)
因果応報という言葉が浮かんだが、首を振ってローは考えるのをやめた。
スマホが震え、力なく通知を確認するとシャチからメッセージが来ていた。
『来週ちゃんの家に猫を見に行くことになったんですが、キャプテンどうします?』
行かない、と返信しようとして、続けて送られてきた写真に指を止める。
虎縞の仔猫を両手に乗せたが笑顔でこちらを見ていた。
(可愛いな……)
思わず笑ってしまい、悩んだ末にローは『行く』と返信した。ペンギンたちにもラミにも散々釘を刺されたが、ようは手を出さなきゃいいのだろう。
(癒やされに行くくらいいいだろ……)
それができるとローは思っていた。大いなる間違いだった。