第2章 猫を見に行こう
家に帰ると、リビングのソファに座ったラミがピザ屋のメニューを見ながら電話をしているところだった。
「お兄ちゃんも何か頼む?」
「いやいい、ラーメン食べてきた」
了解の印に片手を上げて、ラミは慣れた様子で注文を終える。両親は二人共医者なので、急患が入ると帰れなくなることも多い。夕飯が出前やコンビニ弁当になるのはよくあることだった。
「そういえば、お兄ちゃんがこの間言ってた子、わかったよ」
「ん?」
キッチンで水を飲んでたローは何の話かわからず聞き返した。
「ほら、この子でしょ?」
ソファの背もたれから身を乗り出して、ラミはスマホを見せてくる。
部活動の勧誘なのか、野外で抹茶を飲むが写っていた。
「すごい可愛いよね。その写真も1年生にめちゃくちゃ可愛い子がいるってグループラインで回ってきたの」
「……ふーん」
さっき会ったとも言い出しにくく適当に相槌を打つと、ラミに疑いの目で見られた。
「なんで知ってたの?」
女漁りを咎めるような視線にローは辟易した。全部でなくても、やっぱり何かしらはローの悪行について知っているらしい。
「たまたま会っただけだ」
「ふーん」
一欠片も信じていない目と声音だ。
「……私、知ってるからね」
寿命が縮むような一言だった。問い詰め方が母親そっくりでイヤになる。父がしどろもどろに母の機嫌を取っていた姿を思い出し、無理もなかったのだと思い至った。
「何を」
なるべく冷静に、ボロを出さないようにローは聞き返した。