第1章 咲き初め
蟲柱様の話を纏めると、こうなる。
鬼は、鬼舞辻無惨の呪いによって、制約がかけられている筈だが、頭である鬼の血鬼術が洗脳に近いものであれば、他の鬼を ` 己への敵意を無くし、自由に操れる ' 。その時点で鬼は生ける屍。意識が無ければ、一方的に食われようとも反抗はしない。然し、今回は、鬼自身に産み落とす能力が備わっていたから。鬼は鬼を作る事は出来ない。鬼舞辻無惨及び一部を例外として。であれば、鬼だと錯覚したものは、様々な鬼の血が交じり合った肉塊の可能性が高い。とは言え、首を切り離さなければ、再生するのだから、 ———— 此の先を想像するだけで吐き気を催したので、割愛して貰った。然し、此れだけで有れば、春画にありそうな蠱惑的能力でなくとも良い筈。それに至る判断として、鬼が各々戦意を持っていた事。でなければ、あのような窮地に陥らなかった訳で、洗脳だと仮定した場合、思考が遮断されている為に風柱様の発言があるらしいが、私に掛けられた術は一種の呪いだと言う。本来であれば、術を掛けた側に対し、掛けられた側が服従する洗脳ではあるが、術を掛けられた事で周囲への影響を齎しているのが現状である。被った側が、或いは、術を保有する側が、何もない鬼、人間に対し、その効果を発揮する。死の間際に血鬼術を使った所為で中途半端に掛かってしまい、男女両方に効果が表れる筈が男性にだけ現れ、結果、私に近付く男性は否応無しに ` 好意を抱いてしまう ' らしい。しかも厄介な事にそれが本能に訴えるものであって、無意識に作用するもの。故に、大抵その言動を抑制する事は自覚がない為に難しい。
何とも面妖な話。世間には、動物の耳が生える術や幼子の姿に逆戻り、性別が入れ替わってしまう術もあるらしいのだから、今更云々を並べ立てたところで馬鹿げた事実に変わりはないのだが、それでも、脳が考える事を放棄するのは明白だった。
「 今の貴方は、小動物のようなものです。私はあれを愛らしいとは思いませんが、それはさておき。猫や兎を見て、心癒され、愛で可愛がりたいと思う。私のように好ましく思わない…、とまでは行かずとも、極々普通に動物と認識する者もいれば、そうやって愛玩にしたい者もいる。前者が女性、後者が男性。ですが、男は狼とも言いますから、 」
―――――― 食べられてしまわないように、気を付けて下さいね?
