第1章 咲き初め
「 ―――― 、… オイ、胡蝶。さっきの話だが、術の効果がどんなモンか分からねェ以上、診察後は俺がこいつを預かる。 」
「 え゛。ええっと、それは、どういう風の吹き回しです? 」
心底意外だと言わんばかりの蟲柱様の声。そうでなくても私の喉からも疑問符しか溢れず、驚きに見開いた瞳で風柱を捉えるものの、相変わらず涼しい顔で感情が読めない。だが、微かにその瞳に強い感情を感じ取っては、身の竦む恐怖に、少し小さくなる。それで、逃げられる筈もないのだが。
「 不死川さん。貴方が責任を感じている事は十二分に分かりました。駄目です。 」
「 はァ?何が不満なンだよ。つか、あんなクソみてェな男共の巣窟に置いておけるかよ。 」
「 今のでおおよそ、血鬼術の正体が分かりました。取り敢えず、此処は男性も多いので被害が拡大しても困ります。屋敷に戻りましょうか。至極不本意ですが、不死川さん、彼女を運んで下さい。 」
この場一人、何の状況も掴めないまま、何やら楽し気な笑みを浮かべた蟲柱様の指示により、風柱様の背に乗せられ、蝶屋敷へと赴いた。
男らしい広い背中だとか、安定感があって全然揺れないだとか、一層の事、そんな浅はかな邪念でこの場を乗り切れれば良かったのに、柱二人にご迷惑を掛けて胃に穴が開く思いでしかなかった。