第2章 花客
「 そっちは駄目です! 」
「 俺を捕まえられるもんなら捕まえてみな! 」
「 おい、待て伊之助!そっちは駄目だと言われているだろう! 」
「 しのぶさん、怒ると怖いんだからな!また、連帯責任になるだろ!!俺の事も考えてくれよ!!! 」
どた。ばた。声から察するに、きよちゃん達が隊士の方を追っているようで。盛大な溜息と共にアオイさんが扉を閉める。
「 良いですか。絶対にこの扉を開けな、…!きゃ、?! 」
「 うわっ、っぶねえな!急には止まれねえ、い゛ッ?!?! 」
「 わ、わ、止まるな、伊之助! 」
「 うわあああ!!急に止まるんじゃないよ、馬鹿!!!! 」
立て続けに四つの悲鳴。派手な音。壊された扉の上に三つの影。
咄嗟に避けたのだろうか、アオイさんは部屋の隅でなほちゃん達を背面に隠し護っている。
ここは、蝶屋敷で、患者の手当てを主とする場所で、この風景は、些か場違いが過ぎる。
猪頭が一人、扉を下敷きに圧し潰され、その上に緑の羽織を着た少年。更にその上、一番上には、黄色が印象的な少年が。少年と言ってもそこまで幼くはないとは思うが、やっている事は完全に児戯のそれ。
こんなに愉快な光景を見たのは久しく、思わず吹き出すように笑ってしまう。