第2章 花客
「 、!知って、いるのか。 」
柱の名前を知らない隊士が居るのなら、是非ともお会いしたい。
あはは、…と苦笑する私に気にも留めず再度近付く水柱様を阻む様に風柱様に抱きすくめられると思わず、硬直してじわじわと頬が赤くなるのを感じて、言葉にならない音ばかりが動揺を伴って漏れ出す。
キャーッと興奮気味の恋柱様の声が遠くから聞こえ、羞恥に負けて顔が上げられない。
「 冨岡さん、行きますよ。不死川さんは、蜜璃さんと一緒に病室に本を入れてあげてください。その後で、診察室へ。 か な ら ず 、は や め に 、来てくださいね。蜜璃さん、すみませんが、宜しくお願いします。 」
「 あ、あの、ありがとうございます! 」
何とか絞り出した声でせめてと謝辞だけ伝えるものの、それがお仕事ですから、と笑う声と一緒に二つの足音が遠ざかって行くのを感じ、二人が行ってしまったことを察する。
然し、緩まらない力、抜け出すなんて言う不敬な真似をして良いのか、彼にとっては普通の事なのかも、…知れない。
ふっ、と。頭上に影が落ちた。
「 え、 」
「 ん、いや。悪い。飛びつく勢いだったろ、彼奴。オイ、甘露寺。それ、運べば良いんだな? 」
「 え、え?!ええ、そう、そうなの!茗ちゃんが気に入ってくれると良いのだけど、ついでに桜餅も持ってきたの。此処の桜餅、とても美味しいのよ。 」
「 なら、運び入れて、後は二人食っとけ。遅くなったら胡蝶に何言われるか分からねェしなァ…、 」
手伝うと言う言葉を、座っとけェの一言で咎められ、居心地の悪さを感じながら恋柱様の微笑まし気な笑みに促されて大人しく寝台に腰掛け、暫しの時間を費やす事になった。
その後、風柱様は、蟲柱様の元へ。