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[鬼滅]甘さも過ぎれば毒となる

第2章 花客






「 お前が心配だったから、と言えば、納得するか? 」

「 息をするように人を口説くな。面白そうだ、と無理に俺を引き連れて来たことを忘れたか。 」

「 お前も存外乗り気だったろ。まァ、そう言う事だ。男を惹き付ける血鬼術。そんな感じしねえけどなァ。 」



じーッ、と。眼前に寄せられる端正な顔立ちに思わず呼吸をする事さえ憚られるような気がして、そっと息を潜めたのだが、そんな私の様子に音柱様は軽い笑声を上げれば、数度頭を撫で付けられる。

風柱様と言い、音柱様と言い、兄がいればこのような感じなのだろうか。気恥ずかしいような、少し、心が暖まるような。そんな柔らかな気持ちを抱えたのも束の間、音柱様の首根っこを蛇柱様が掴んで引き離して下さる。

少し、寂しいと思ってしまったのは、恐らく、気弱になっている今だから。



「 距離感を考えろ。不用意に近付いて術に嵌まったら如何する。 」

「 この部屋に入った時点で一緒だろ。お前は?何か感じる? 」

「 はッ、笑わせるな。俺は元より甘露寺以外に興味なぞない。幾ら近付いた所で術も不発だろう。 」

「 俺も、嫁達が居るから平気なのか?それはそれで、地味に面白くねえな。 」



嬉しいのか、嬉しくないのか。いや、術の打開策があるのなら、今、心細い私からすればとても嬉しい事実である。そも、風柱様との鬼ごっこを思えば、柱の方々を相手にそのような想いを抱かせてしまうのは、一介の隊士である私には身が余り過ぎる。

と、神聖的な意味ではなく、畏怖の方で。



「 こんな所で監禁されていたら退屈だろ。どうだ、俺の屋敷に来るっつうのは。嫁たちも喜んで歓迎してくれるぜ。まァ、着せ替え人形になっちまうかも知れねえが。 」

「 不死川と同じ轍を踏むつもりか。先ずは、文通……、いや、お前の好む甘味を持って来てやろう。女からの評価が高ければ、甘露寺もきっと喜ぶ。 」

「 え、ええっと……、 」

「 宇髄さん、伊黒さん。 」

「「 げ、 」」


この病室の私的空間は存在しないのだろうか、と思いたくなる程に、勝手知ったる様子にて、来訪者総勢4名が此の空間に立ち並ぶ。

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