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[鬼滅]甘さも過ぎれば毒となる

第2章 花客




結果として、私が選んだのは、思い付く限りで一番安全な蝶屋敷への滞在だった。

勿論、風柱様の御心配りはこの上なく嬉しいが、未だ異性との交際経験のない私には実質異性と二人きりで過ごすなど、耐えられる筈がなく、その心中も含めて伝えると、風柱様は存在素直に納得して下さり、軽い謝罪と一緒に武骨な逞しい手で軽く頭を撫でて下さった。


そうして私の軟禁生活が幕を開けた。


その幕も、数分後には容易く引き下げられたのだが。



「 それで、派手に面白い術に罹ったってのは、お前か? 」



一応、屋敷で居る以上は病人扱いだと、寝台に腰掛け読書に耽っている頃、何もなかった室内に突如響く声。大袈裟な程に身体を震わせ、ついでに洩れそうになった悲鳴は、口許塞ぐ男の手の内へ、消えて行った。いつのまにやら、室内には男の影。ぱちぱち、と瞬きを繰り返し、その男の ──── 音柱様の視線に絡め取られれば、塞いでいた手をそっと離される。呼吸に自由が利くと、落ち着く為にもゆっくりと深呼吸を繰り返すが、未だにバクバクと心臓の音が煩い。

絞り出すようにして何とか呼び掛けると、 ───── 音柱様は、薄い笑みを浮かべた。



「 ひ、……っ、……お、おと、ばしらさま。 」

「 幽霊でも見たような顔だな。驚かせちまったか。悪い悪い。 」

「 胡蝶めにバレると何かと面倒だ。 」

「 っ!、?! 」



またも知らぬ間に、開いた窓辺に座っていた蛇柱様の姿には流石に声にならない叫びを上げ、目を白黒と忙しなく回すものの、そんな様子でさえ、変わらない表情と愉快と笑う表情に見詰められれば何やら恥ずかしくなってくる。


柱は恐ろしいと言うが、確かに、恐ろしい。何より、何故、此処に居るのか。蛇柱様の声からして、きっと恐らく、無断で来てくださった事に間違いはないのだろうが、果たして、それの意味するところとは。

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