第6章 お出かけ
東京府浅草
珠「お母さん!!早く早く!!」
真「急いで、お母さん!!」
『わかったから、ちょっと待って。あ、先に行かないの!!』
大喜びで先へ先へと走っていく二人を慌てて追いかける。都合上、二人を中々外に出してやることができず、仕事の関係でこうして出かける機会も少ない。それゆえに、出かけるとなればこのように二人は大はしゃぎするのだ。
普段は大人の都合で屋敷に閉じ込めているため、怒るに怒れない。とはいえ、いつどこで何かあるかわからないから、そばを離れないでほしい。
それにこの街は、炭治郎が鬼舞辻無惨と出会った場所。用心するに越したことはないか。
神経を張り巡らせながら、ようやく捕まえた二人の手を取り、追いかけてきた佳恵子さんと楓と合流する。
佳「芳華さん、まずは呉服屋に行きますか?」
『そうね。まず最初に行っちゃおうか。後からだとこの子達も疲れちゃうだろうから』
楓「じゃ、まずは時雨屋ね」
今いる場所を少し歩いて角を曲がった場所にそれはある。
時雨屋は江戸時代から続く歴史ある呉服屋だ。鬼殺隊に入ってから贔屓にしており、普段着ている羽織や双子、佳恵子さんの着物などは全てここにお願いしている。
「いらっしゃいませ、芳華さん」
『こんにちは、彰子さん』
柔和な笑みで出迎えてくれたのは、時雨屋の女将である京彰子(カナドメ アキコ)さん。佳恵子さんと同い年くらいの和風美人で、お客さんというより、娘のように接してくれる人だ。
彰「今日はどのようなものをお探しでしょうか?」
『一通り、着物から帯、小物まで全てお願いします』
彰「かしこまりました。それから、頼まれておりました着物が出来上がりましたが、ご覧になられますか?」
『えぇ、お願いします』
彰「では、こちらに」
彰子さんは後ろにいた女性に四人を別室に連れていくよう指示すると、私を別の部屋へと先導した。