第5章 無限列車
〝栗花落芳華〟
何百年も前に死んでしまった彼女に瓜二つの女。私を理解し、心の支えであった最愛の女性の生き写し。
あの時、偶然目にした瞬間から手に入れようと上弦たちを差し向けてきたのだ。
手元に置けたら、どれほど喜ばしいことか。
しかし、現実はそうはいかず。鬼狩りの柱として、かなりの実力を備えた女。差し向けた上弦をことごとく返り討ちにするほどの強さを誇る。おそらくは鬼殺隊随一であろう。
それに、あの時私に向けられた視線。あれは紛うことなき〝憎悪〟。
彼女と同じ顔をしながら、私を睨みつけるのを見た瞬間、何百年も感じていなかった感情が蘇った。
無理に連れてこようものなら、おそらくあの女は自害を選ぶだろう。上弦たちの話では「鬼になるくらいなら死ぬ」と言っているようだしな。
だがしかし、ようやく見つけたのだ。何百年も探し続けた最愛の人の生き写し。私が人の心を見せる唯一の人。
しかし彼女は人間で、私は鬼。鬼狩りと鬼。命を守る側と奪う側。決して相容れぬ者同士ではずっと一緒には生きられない。ならどうすれば一緒にいられるか。
簡単だ。彼女を鬼にすればいい。
そうすれば一緒にいられる。嫌がろうと逃がさない。必ず手に入れる。
鬼「綾乃.......」
堕ちた私をお前はどう思うだろうか。
お前も私を否定するだろうか。それとも、あの日の笑顔でまた笑いかけてくれるだろうか。
どちらにせよ、まずは〝栗花落芳華〟を手に入れなくてはならない。
早く、早くっ、我が手に!!
side 鬼舞辻 終