第5章 無限列車
もう夜が明ける。今ここであいつの首を斬る。
猗「ちっ」
逃げ出そうとする猗窩座に、腕めがけて刀を下から上へと振り上げる。切り落とされた右腕は宙を舞い、そのまま落下していった。
『逃がすわけないでしょ』
左腕をへし折る勢いで掴み、逆の手に持った刀を目の前の首へと押し付ける。
『さよなら、猗窩座』
刀はそのまま猗窩座の首を斬った
.............はずだった。
猗「くそぉぉおおおおおっ!!!!」
次の瞬間、掴んでいたはずの猗窩座の腕はちぎれ、首から刀が抜けていた。
『─────っ!!』
顔めがけて蹴りを入れられ、咄嗟に顔の前で腕を交差する。衝撃が走り、蹴られた方向へと体が倒れていく。
まずいっ、逃げられる!!
そう思った瞬間にはもう猗窩座の姿はなく、東の空からは朝日が昇り、周りを照らしはじめた。
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楓「芳華、怪我は?」
怪我人四人を手当てしていると、楓が小走りで近寄ってきた。
『肘を掠ったくらい。大きな怪我はしてないから心配しないで。あっちは?みんな無事?』
楓「乗客は怪我の大小あれど、みな無事。一番の怪我人はあんたが今手当てしているその四人」
『そう』
死者が出なかったと聞いて、ひとまず安心した。これも炎柱の活躍が大きいだろう。一人で五両も守ってくれたらしいし。
炎柱の怪我を診終え、炭治郎の方へと体を向ける。
杏「栗花落殿は医療の知識まであるのか!」
『まぁね。それから薬学も。何かあった時に便利だし』
耀哉のこともあって、必死こいて勉強した。おかげである程度の治療なら自分で出来るし、対鬼用の毒などの研究もできるようになった。
鬼殺隊をやめてからも、医学と薬学の知識があれば医者として食っていけるし。一石二鳥ですな。
手にしていた包帯をギューッと縛ると、「痛ってぇ!!!」と悲鳴が上がる。
あ、やりすぎた。悪い、イノシシ。
怒るイノシシの頭を足で押さえつけながら包帯を緩め、ぐるぐると優しく巻いていると、楓が思い出したように言った。
楓「それより、芳華。あんた、帰らなくていいの?」
『へ?』
楓「珠希と真望が起きる前に帰るんじゃなかったの?」
『..............あぁぁぁぁあぁああっ!!!』