第5章 無限列車
運転手の手を両手で包み込むように握る。
『理由は違くとも辛い思いをしてる人は五万といる。でも、現実と向き合って今を生きてる人も五万といる。辛いのは貴方だけじゃない。甘ったれないで。楽して生きよう、死のうだなんて思うな。都合のいい夢は泡と同じ。儚く、すぐに消えていく。後に待ってるのは地獄だけ。それだけはどうか忘れないで』
片手で目元を覆って涙を流す運転手。辛かったのだろう。でも、甘やかしはこの人のためにならない。
これ以上言うことは無いと、次の人の所へと向かおうとした瞬間、「すまなかった.......っ」と小さな声で言われた。
『謝る相手は私ではないわ。でも、これからは間違えないでくださいね』
何度も頷く運転手。この人はきっと大丈夫だろう。気づくことができたのだから。自分で気づくことが出来れば、もう道から外れることは無い。
そう確信して安堵した瞬間、ものすごい爆音と共に地響きが辺りを襲った。
楓「な、何!?この揺れ!!」
『まずい!!』
来てしまった。こんなことしている場合じゃない。一刻も早く行かなきゃ、〝彼〟が死んでしまう!!
『楓っ、他の隠が来たら一刻も早く乗客の手当てを!!私は炭治郎達のところに行くわ!』
楓「え、ちょ、芳華!!」
「待ちなさいよ~!!」と後ろから聞こえてくるが、そもそも私がここに来た理由はこれなのだ。〝彼〟を助けるためにここに来たのに、死なせてしまったら来た意味がない。今はこっちが優先!!
楓には申し訳ないが、しばらく一人で頑張ってもらうしかない。
全速力で炭治郎たちの元へと急ぐと、夢ではっきりと見えた鬼が血だらけの炎柱と対峙していた。