第5章 無限列車
『とりあえず乗客の中に死にかけてる人はいないから、怪我が酷い順に連れてくるわ。終わったら、その辺に一列で並べといて』
楓「はいはい。物じゃないんだから」
『動けないんだから、しょうがないでしょ。じゃ、よろしく』
楓「早く連れてきてね」
ため息まじりの言葉を背に、とりあえず1番酷そうなあの運転手のところに行き、怪我に触れないよう、慎重かつ問答無用で楓の所に運ぶ。
『楓、こいつは痛かろうが喚こうがなんだろうが、徹底的にやって』
楓「何があったか知らないけど、一応怪我人なんだから、勘弁してあげれば?こいつが一番酷いんでしょ」
『邪魔した罰と炭治郎を刺した罰よ。別に酷いことするわけじゃないんだからいいのよ』
「..............ま.......ば、.......っ.......」
運転手がボソボソと呟いているが、まるで聞こえないので口元に耳を近づける。
「お前、たちが、邪魔.......しなけ、れば、夢が.......みれ、た、のに.......なぜ.......」
こいつ、まだ言うか。どんなけ夢見たいんだよ。甘えんじゃねぇよ、大の大人が。
『それが私たちの仕事だからよ』
「しご、と.......だと?」
『そ、仕事』
悲しむ人を増やしたくない。その一心でこれまで生きてきた。だけど、それは鬼が関わっている前提の話。他で苦しんでいる人達の気持ちなんて私にはわからない。
だけど、残された人たちの心にあるのは同じ気持ち。
〝辛い〟〝会いたい〟〝苦しい〟
夢で愛する人達と会うことが出来るのなら、一生その夢から覚めたくない。私だって、きっとそう思う。でも、それじゃあダメなんだ。
『あなた達が何を抱えて、あの鬼に協力したのかは知らない。だけど、耐えられないほどに辛いことがあったから夢の中で辛さを忘れたがった。
私も今でも忘れられない辛い過去がある。家族を殺された過去よ。鬼に殺されたの。私だけが生き残った。辛かった。全部を憎んだし、嘘であれと何度も願った。だけど、現実は甘くない。一人、前に進まないといけない。どんなに辛くても、心臓が動いて、呼吸をしている以上は生きていかなくちゃいけない』