第5章 無限列車
列車と融合した鬼は暴れ回り、横転して動きを止めた。何とか踏ん張るものの、耐えきれず外に投げ出されて地面へと転がってしまった。
痛い。最悪だわ。
すぐに体を起こすと、二人を探した。イノシシは問題なさそうですぐに起き上がったけど、炭治郎は転がって起き上がれないらしく、動こうとしなかった。
さっき刺されたせいで動けないんだ。
『炭治郎、怪我は?』
炭「芳華、さん.......」
『腹部の出血が酷いわね。もっと集中して、呼吸の精度をあげてみて。体の隅々まで、神経を行き渡らせるの。そして破れた血管を探してみて』
とにかく集中するように言うと、すぐに出血箇所を見つけたらしい。
『見つけたみたいね。そこを止血するの』
炭「.......っ」
全集中の止血方法は柱にとっては初歩中の初歩。出来て当たり前。これができて、ようやく柱への一歩を踏み出すようなもの。
本当は私が治してもいいんだけど、それじゃあ彼のためにはならないからね。
炭「ぶはっ!!はぁっ、はっ.......?」
『止血できたみたいね。呼吸っていうのは、万能ではないけど、極めれば色々な事ができるようになるの。昨日の自分よりも強くなれるわ。だから、頑張りなさい』
炭「.......はい」
『それじゃあ、私は乗客の人たちを見てくるから、ここで大人しくしてるのよ。イノシシくんにあなたのことをお願いしておくから』
立ち上がりながらそう言い、炭治郎が頷くのを見て、列車の方へと向かった。
まだあいつは現れてない。あいつが現れる前に乗客の安否を確認しないと。
若干急ぎながら、一人一人見てまわる。
怪我人はいても、死んだ人はいなさそう。さっき炭治郎を刺した馬鹿運転手も足を怪我してるけど、命に別状はなさそうだし。よかった。
『楓、いるでしょ?』
楓「もちろん」
怪我人の介抱をしながら呼びかけると、すぐに返事が返ってきた。振り返ると、隠の服を着た親友が治療道具を持って立っていた。
楓こと、本名音海楓は私専属の隠。四つ歳上の彼女は同期だったが、剣の腕には恵まれなかった。だけど、他に関してはかなり優秀であり、気も合うので、耀哉に頼んで専属としてつけてもらったのだ。性格は姉御肌でとにかく心配性。怪我して帰る度に佳恵子さんと二人で長時間説教してくる。