第5章 無限列車
どこに向かっているのかわからない列車。隠れていた場所から出ると、何故か乗客全員が眠っていた。
やっぱりあの車掌だったか。早々にあの車掌が怪しいと睨んで正解だった。じゃなきゃ、今頃自分も眠らされていただろう。
にしても、これが今回の鬼か。
重たい鬼の匂いがする。気配もそこら中に感じられる。おそらくこの列車自体が鬼なんだろう。
だけど、こいつは〝まだ〟弱い。めんどくさくはあるが、図体がでかい分、小回りが利かないし、逃げることも出来ない。
とりあえず炎柱と炭治郎たちを探そう。多分だけど、罠にハマって眠らされているはず。柱なら気づけよ、とはつっこまないでおいてあげる。
一つ一つ車両を見ていくと、眠らされている四人を見つけた。慌てて駆け寄り揺さぶるが、全く目を覚まさない。彼らの手首に結ばれた縄の先には若い男女の手首に繋がっていて、同じく眠っていた。
何この縄。わざわざ捨て駒と繋げているってことは、これが切れれば目が覚めるってこと?だけど、これ、日輪刀で切ったらいけない気がする。
どうすれば、と悩んでいると、ここ数日で見慣れた箱が目に入った。
そうだ、禰豆子の血鬼術なら!!
禰豆子を箱から出すと、笑顔ですり寄ってくる。
うん、可愛い。可愛いけど、今はそれどころじゃないから!!
『禰豆子、炭治郎やみんなの縄と切符を燃やして!!それでも起きなかったら、殴るでも蹴るでもなんでもいいからみんなを起こして!!私は鬼の所に行くから』
禰豆子「(コクッ)」
禰豆子が縄を燃やし始めたのを見て、一番匂いの濃い場所へと急ぐ。
おそらく鬼は上にいる。だけど、あれを切ったところで列車は止まらない。もはや融合しているこの列車の先頭、運転室の真下にある首を切らなきゃ鬼は倒せないし、列車は止まらない。
『ほんっとに、ろくな事しない』
あの若い子たちだって、現実から目を背けたくて手を貸した。自分の望む夢見るために。
ほんとに馬鹿みたい。
病気なら可哀想とは思うけど、死ぬ気で努力もせず、他人任せで甘い蜜を吸おうだなんて厚かましいにも程があるわ。いい加減、目を覚ませっての。馬鹿め。
で、その弱みにつけ込む野郎はもっと馬鹿。人の傷を抉るんじゃないよ!!アホ!!
最低な手口に怒りが爆発しそうだった。