第4章 〝鬼〟という存在
裁判からしばらく経ったある日の夜。
あ、いたいた。
気配を追って、目的の人物を探していると、その人はすぐに見つかった。
屋根の上で全集中の呼吸をしている炭治郎の隣に気配を消して音なく降り立つ。かなり集中しているのか、こちらに全く気づいてない。
『もしもーし』
炭「.......」
『あれ、おーい』
気づかない。よく集中してるな、感心感心。
『もっしもーし』
炭「ハイッ!?」
『頑張ってるね』
隣に座ると、心底驚いた表情でこっちをみてきた。
『止まってるよ』
炭「あっ」
全集中の呼吸が止まってることを指摘すると、すぐに呼吸をし始めた。
炭「お久しぶりです、栗花落さん。禰豆子はどうしてますか?」
『芳華でいいよ。禰豆子ちゃんなら最初は寝てたけど、今は起きて娘と一緒に遊んでるよ』
炭「そうですか、よかった..............え、娘?」
あ、また止まった。この程度の衝撃で止めるとは、まだまだだね。
『呼吸』
炭「は、はい!!」
しばらく黙ってると、様子を伺うように聞いてきた。
炭「娘さんがいるんですか?」
『うん、二人ね。双子なの』
炭「あ、もしかして前に言ってた珠希ちゃんと真望ちゃんですか?今いくつなんですか?」
『五歳よ。そっくりで本当に可愛いの。性格は似てないけどね』
炭「五歳。ん?芳華さんは八歳で柱となって、そのままお館様に12年使えていて.......え、ん?」
混乱してるね。まぁ、この歳でそんなに大きな娘がいれば混乱もするか。しかも鬼殺隊の柱だしね。
ぶつぶつと頭を傾げて考えている炭治郎に苦笑しながら疑問に答えてあげる。
『娘といっても血の繋がりはないよ。任務中に偶然、捨てられて鬼に喰われかけていたあの子たちを見つけてね。そのままにも出来ないから保護して、引き取ったの。でも、本当の娘のように思ってるわ』
炭「大切なんですね」
『えぇ。あの子たちは私の光、希望。どんなに辛くても、あの子たちがいると思うと頑張れる。生きて帰らなきゃって思えるの』
双子の笑顔を思い出すと、自然と笑顔になれる。二人が笑顔を絶やすことなく、幸せに生きられるためなら、どんなに辛くても刀を握っていられる。
もう二度と、私の大切なものを失わせはしない。そのために鬼殺隊に入ったのだから。