第3章 赤い髪の少年と鬼の少女
軽く頭を振り、それを消す。
『炭治郎は』
し「竈門くんは私の屋敷でお預かり致しましょう」
『頼むわ、しのぶ』
し「お任せ下さい!はい、連れていってください!」
「前失礼しまァす!!」
その声と同時に炭治郎が隠に抱えられて連れていかれた。
はぇーな。どんなけ柱怖いんだよ。柱も一応人間だぞ。
苦笑してると、何故か炭治郎が猛ダッシュで戻ってきて風柱を殴らせろと嘆願しだした。で、怒った愛弟子に石ぶつけられて撃沈。さっき態度と口の利き方には気をつけろって言ったばかりなのに。
「面白い子だけど、馬鹿だな」と呆れつつ、すり寄る禰豆子を説得して箱に入れると背中にしょった。
『それじゃあ、私も戻るよ』
耀「ありがとう、芳華」
『じゃ……』
耀「芳華」
足に力を入れた瞬間、後ろから声がかかった。
耀「大丈夫かい?」
『……っ』
あぁ、やっぱり隠せなかった。この人には隠し事ができない。どんな小さなことでも見破る。
でも、言えない。言わない。これは私の弱さだから。
乱れた呼吸を整える。
落ち着いて。この程度で動揺を見せるとは、柱の名が廃る。落ち着いて、大丈夫。今の私は昔とは違う。大丈夫、大丈夫.......
呼吸がしっかりしてくると、いつもの自分が戻ってきた。
『大丈夫』
耀「本当に?」
『えぇ。さっきの炭治郎の姿が死んだ兄の姿と重なって見えた、ただそれだけ。兄も妹(ワタシ)のことを大切にしてくれたから』
だから、懐かしく思っただけ。
どんなに懐かしく、恋しく思ったところで、兄も、家族も、全員殺されてしまったけど。いや、殺されたんじゃない。
殺したんだ、私が。
未だ心の隅に住まい続ける後悔の念。消えることのない罪悪感と自責の念。そして、怒り。
それは積りに積もって、私を押しつぶす。
時々、耐えきれなくなる。辛くて、立っていられなくなりそうになるほどに。
ぎゅっと拳を握ると、痛みで少し息ができた気がした。
『.............帰るわ。今日は西北西の町に出るから』
耀「そうか。十二鬼月は」
『出ないよ。雑魚だから大丈夫』
私の夢は外れない。これまで見た中で外れた夢はひとつもなかった。だから、信じられる。たとえ外れても、その場で切り抜けられる力が今の私にはある。